大 隅 史 談 会

      ―平成27年度月例会― 

         
第2回 6月例会

     日 時   628日(日) 13:30〜16:30

     タイトル   「神武誕生」をめぐって

     発表者   武田悦孝(理事)

     会 場  
 鹿屋市 東地区学習センター

     参加料   500円(資料代ほか)



   
※会場アクセス…私立鹿屋中央高校より南へ約200b左側。
   ※問い合わせ先…松下(0994−49−2360又は090−2083−2360)


     神武誕生                発表者 武田悦孝(たけだ・よしたか)

 【発表要旨】

 ※大隅史談会の56号に投稿した論考を中心に発表した。

   1、神武誕生

  日向神話の具体性を特徴として捉え、天孫降臨以降の3代(神武まで入れれば4代)は単なる神話ではないと考える。
西洲宮…高山町宮下の桜迫神社の辺りがウガヤフキアエズの王宮跡(宮富小学校の隣り)という伝承、また神武誕生にかかわる「いや塚」(胎盤を埋めた塚)もある。またこの地は「四神相応」の土地であり、そのこともまた「王都」にふさわしい。


   2、神武の父母と妻

吾平山陵…神武の父ウガヤフキアエズと母タマヨリヒメの陵墓とされ、全国的に珍しい岩窟の中にある。宮内庁書陵部の管轄で、現在も美しく保持されている。「小伊勢」とも呼ばれている。

大川内神社…吾平山陵の傍らを流れる姶良川の上流「神野地区」の奥まったところに鎮座し、祭神は神武天皇の母である「アイラツヒメ」(吾平津媛)。

『延喜式』…第21巻に「諸陵寮」があり、その中に神代三陵の記事がある。それによると<日向にある。陵戸なし。>とあり、所在地の詳細は無いが、神代三陵は山城国葛野郡にある田邑陵(文徳天皇陵)の南原で祭るよう定められていた。これが神代三陵実在の証拠となる。

   
3、神武東征とその伝承

南九州から大和へ…記紀の記述における「神武東征」は極めて重要な物語で、古代史を解明するうえで避けて通れない。

神武東征の伝承…大隅半島には神武東征に関する伝承が多い。霧島市福山町に鎮座する宮浦神社、肝属川河口の柏原・波見地区、また大淀川下流の宮崎市北方町の皇宮屋、都農町の都農神社、耳川河口の美々津など、枚挙に暇がない。

   
4、神武天皇陵と大海人皇子(天武天皇)

神武天皇陵…『延喜式』には<大和国高市郡。兆域は東西一町・南北二町。守戸は五烟。>と記録されており、また東征の途中で戦死したイツセ命を葬った「竈山墓」については<兆域東西一町、南北二町、守戸三烟。>と記されている。この記述があるということは延喜式編纂当時に両墓が実在しており、東征が史実であることを認識していた証拠である。

戦勝祈願…壬申の乱(672年)の際に、大海人皇子がイワレヒコ(神武天皇)の陵墓に馬や兵器を奉献し、戦勝祈願を行ったとする記事がある。これは7世紀に神武天皇の陵墓があったことと、初代天皇としてまた歴代大王の中で最も偉大な武神として崇拝していたことを示唆している。

   
5、神武天皇の実年代

統一国家の成立前…高地性集落の発達は弥生時代に大きな戦乱状態があったことを示唆するが、やがて前方後円墳が各地に造営される頃になると、これらは放棄され、次第に埋没していった。これらの遺跡で九州に近いものは弥生中期に多く、近畿に近いものは弥生後期に多いという。さらに4世紀前半に実在したとされる祟神天皇および垂仁天皇ののちに即位したとされる仲哀天皇の九州での死因について、書紀には「クマソを討った時に賊の矢に当たって死んだ」とする異伝を載せており、この時点で統一国家の成立は無かったと考えられる。

対外進出…4世紀後半に百済と伽耶南部諸国、倭と伽耶南部諸国が同盟し、共通の伽耶を通じて百済と倭は同盟関係に入るが、それを記念したのが天理市石上神宮に所蔵されている「七支刀」である。百済王の世子が倭王の為に作刀させた旨の金象嵌文字が刻まれており、友好関係を象徴している。
 また『高句麗広開土王の碑』には4世紀末年の半島における倭との交戦が記されており、この時点で倭国は軍事力・政治力において統一した国家を築いていたと考えてよい。

古墳時代…前方後円墳は3世紀末に現れ、6世紀末にはほぼ終焉するが、畿内では弥生時代の墓制から連続的に前方後円墳に変化発展したのではなく、「突然の出現」ということが言われている。すなわち大和(奈良県)域以外の地で発生した古墳文化が突然奈良盆地および畿内に入って来たと考えられるのである。この突然の出現は4世紀後半以降の統一国家成立の時期を特定する。すなわちクマソによる仲哀天皇の戦死のあった西暦340年頃から、半島国家百済との同盟関係に入った366,7年には大和を中心とする統一国家が生まれたのではないだろうか。

                                          
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