『古事記』から学ぶおおすみ歴史講座


   第6回 ニニギ命とホホデミ 
           (天孫降臨神話@)         
(H27.10.18)


※葦原中つ国を統治していたオオクニヌシ一族に国譲りを約束させたあと、いよいよアマテラス直系の支配者であるいわゆる「天孫族」が、高天原から高千穂に降り、南九州(古日向)において新たな中つ国統治の黎明が始まり、三代の王朝が続いた―という段である。
 これを描いた説話を「日向神話」というが、この時の日向はまだ宮崎と鹿児島を併せた領域、すなわち「古日向域」を舞台にしている。したがって「日向神話」は「古日向神話」と言い換えないといけない。

ニニギ
ノ命
概       略 備  考

天孫誕生
 スサノヲとの誓約によって生まれた長男・正勝吾勝勝速日天忍穂耳に葦原中つ国を治めるようアマテラスは命じたが、準備をしている間にニニギノミコトが生まれたので、この皇子を降すことに変更した。父はオシホミミ、母は高木の神の娘ヨロズハタトヨアキヅシヒメである。

※父のオシホミミを降さなかったのは古日向「投馬国」系の王者たちは白村江戦役で敗北したからであろう。そのことを暗示していると見たい。
ニニギ…漢字では「邇邇芸」と書く。正式名を「天邇岐志国邇岐志天津日高日子番能邇邇芸命」という。稲穂の実りの豊かさを言祝ぐ命名である。

猿田毘古
 ニニギが「五伴緒(イツトモノヲ)」を従えて降りようとした時、天八衢(アメノヤチマタ)に国つ神が待ち構えていた。アメノウズメを対面させて名を問うと、「天孫の降臨を聴き、御先導申し上げようと参りました猿田毘古でございます」と答えた。 サルタビコ…「サル」は「猿」を当てたように「二本足で歩く」ということ。鹿児島方言などでは歩くを「サルク」「サリク」という。

天孫降臨
 降臨の際の五伴緒は「アメノコヤネ(中臣氏祖)」「フトダマ(忌部氏祖)」「アメノウズメ(猿女君祖)」「イシコリドメ(鏡作連祖)」「タマノオヤ(玉祖連祖」」で、これに勾玉・鏡・剣(草薙剣)およびオモイカネ神・タジカラヲ神・アメノイワトワケ神が加わった。
 ニニギは天のイワクラを離れ、天の八重雲を押し分けて竺紫の日向の高千穂のクジフル嶺に降臨した。この時にアメノオシヒ(大伴氏祖)とアマツクメ(久米直祖)が頭椎(くぶつち)の大刀と弓矢を手に先導をした。
 ニニギは降臨した場所から眺め、「ここは韓国に向かっており、笠沙岬にまっすぐ通じている。また朝日も夕日もよく当たる理想の土地だ」と言った。そしてここに大きな立派な宮殿を建てた。
勾玉・鏡・剣…いわゆる「三種の神器」。
思金神…「思兼」とも書き、この「兼」を使う方が正しい。「議論を公平に聞く」という意味だろう。
頭椎大刀…この大刀は比較的多く発掘される。「侍大将」(司令官クラス)の所持品に違いない。

猿女君
 アメノウズメが猿田毘古をうまく懐柔したので国つ神が反抗することはなかった。そこで天孫はアメノウズメをサルタビコに娶わせた。それでアメノウズメは「猿女君」と言われるようになった。
 サルタビコは伊勢の一志郡のアザカにいた時、潜水してヒラブ貝の捕獲をしていて手を挟まれて海底まで連れていかれたことがあった。その時、底どく御魂、粒立つ御魂、泡さく御魂が生まれた。
底どく御魂以下…潜水(海士)した時の吐く息の様子を的確に捉えた表現で、古事記の成立に於ける海民の濃厚な存在感を思わせられる。

木花
佐久夜
毘売
 高千穂からまっすぐ笠沙岬にやって来たところ、ニニギはその地で美女に出会った。オオヤマツミ神の娘でカムアタツヒメ(又の名コノハナサクヤヒメ)と名乗った。
 父神に結婚の許しを乞うと父はもう一人の娘イワナガヒメを副えて差し出した。しかしイワナガヒメは大そう醜く、ニニギは彼女を父神のもとに返してしまった。
 オオヤマツミ神は恥ながら次のように言った。「イワナガヒメを副えたのは岩のように長寿であるようにとの願いからで、コノハナサクヤヒメだけでは天孫の寿命【木の花のあまひのみ】つまり短命になりましょう」。
 一夜の契りで子を孕んだサクヤヒメに対してニニギは「国つ神との子ではないか」と疑いを持つ。その疑いを晴らそうとサクヤヒメは産屋に籠もり、火を着けて産もうとした。「無事に産まれたら天孫の子」と言ったのだが、無事に三人の男の子が産まれたので嫌疑は晴れた。長男をホデリ、次男をホスセリ、三男をホオリと名付けた。

※この三子の名は「火山活動」の段階を表しているようにも捉えられる。ホデリ・ホスセリは活動が盛んなさまを、ホオリは活動が収まったさまを思わせ、このような火山活動を身近に体験している南九州(古日向)人の伝承が基になっているいる説話といってよい。
・あまひ…「雨間ひ」のことか。花は雨に当たると散り急ぐ。その雨と雨との短い間だけしか花は咲かない。
ホデリ…隼人阿多君の祖。書紀本文では次男のホスセリを隼人の祖とし、長男をホアカリとして尾張氏の祖に当ている。
ホスセリ…書紀ではこれが隼人の祖。
ホオリ…火が下火になる。別名の「ヒコホホデミ」に見える「穂」はまさしく稲穂で、火山活動が収まらなければ栽培できない。
ホオリ
ノ命
概      要 備  考

海幸彦

山幸彦
 ホデリは海幸彦として海で暮らし、ホオリは山幸彦として里山で暮らしていたが、ある時、それぞれの(道具)を交換してみようということになり、ホオリはホデリの釣り針を貸してもらい海に釣りに出たところタイに糸を切られて釣り針を失ってしまった。
 海幸は失くした同じものでなければ受け取らないという……。
…「さち」を原書では「佐知」という漢字を当てている。「知(チ・しる)」は統治であり、「佐」は「助ける」で、統治を助ける道具のこと。

海神の宮
訪問
 困ってしまった山幸彦が海辺に佇んでいると塩椎(シオツチ)神が現れ、海神の宮に行くようにすすめ、無間勝間の船を作ってくれたので、それに乗って海神(ワタツミ)の宮に行った。
 宮殿の召使いの女が井戸端で水を汲んでいるところに出会い、水を所望してその玉器(玉製の器)に首飾りの玉を付着させた。
 すると通じたのか、海神の娘豊玉毘売と目合わせ、ついに海神の宮に三年暮らすことになる。
塩椎…「しおつち」とは「潮つ路」のこと。海路(コース・潮の流れ)を熟知している海民。
玉器…首飾りの玉とともに「玉」は「魂」を表現している。

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