『古事記』から学ぶおおすみ歴史講座

 第2回 別天つ神五柱から須佐之男命の涕泣まで (H27.6.21)


   (※神々の名は例外を除いてはすべてカタカナで記載した。また「〜の神」の「ノ」は省略した。)
大項目 小項目 備考
別天つ神
(五柱)
<天地の初発>
高天原(たかあまはら)に成った神々
  アメノミナカヌシ神・タカミムスビ神・カミムスビ神(独り神)
国が稚く浮いた油のような状態の時に成った神々
  ウマシアシカビヒコヂ神・アメノトコタチ神(独り神)
※同じ「別天神五柱」といっても、後者の二神はやや具体性がある。
・「別」は「こと」と読み「特別」という意味。
・独り神五柱はすべて「身を隠した」とある
・天地初発をビッグバンに喩えることが可能である。
神代七代  クニノトコタチ神とトヨクモノ神の二柱神も独り神で身を隠した。
 ウヒジニ神・スヒジニ神。ツノグヒ神・イクグヒ神。オオトノヂ神・オオトノベ神。オモダル神・アヤカシコネ神。イザナキ神・イザナミ神。
・ウヒジニ神以下はそれぞれ対になった神々で、五代を表している。
伊邪那岐命

伊邪那美命
1、国土の修理固成
 天つ神の命令でイザナキ命とイザナミ命が国土を造り始める。
 最初にできたのが「於能碁呂島(おのごろじま)」。
2、二神の結婚
 イザナキ命とイザナミ命はオノゴロ島に降りて「天の御柱」と「八尋殿」を見立てて交接したが、イザナミの方から声をかけたのでよい子が生まれなかった。「水蛭子(ひるこ)」と「淡島」が生まれたがこの数に入れなかった。
3、大八島国の生成
 今度はイザナキの方から声をかけたので佳い子が生まれた。
 @淡道の穂の狭別島(あはじのほのさわけ島=淡路島)
 A伊予の二名島(四国島)
   伊予国(えひめ)・讃岐国(いいよりひこ)・粟国(おおげつひ    め)・土佐国(たけよりわけ)
 B隠岐の三子島(あめのおしころわけ)…隠岐島
 C筑紫島(九州島)
   筑紫国(しらひわけ)・豊国(とよひわけ)・肥国(たけひにむか   ひ、ひゆたかなるくしひのねわけ)・熊曽国(たけひわけ)
 D伊伎国(あめひとつばしら=壱岐島)
 E津島(あめのさでよりひめ=対馬島) 
 F佐渡島
 G大倭豊秋津島(あまつみそら・とよあきつねわけ)
※「大八島国」としてGの本州島と@BDEFのような小島が同列に並んでいるのが不思議だが、国土の境界領域までを表現したものであり、それらを把握する力をもっているのは航海民であった。以下の島々も同様の視点でとらえることができる。
 H吉備児島(たけひかたわけ)
 I小豆島(おおのでひめ)
 J大島(おおたまるわけ=大三島または周防大島)
 K女島(あめひとつね=姫島)
 L知訶島(あめのおしを=五島)
 M両児島(あめのふたや=屋久・種子島)
4、神々の生成
 国々が造られたらそこに自然物が生まれ神格化された。
 オオコトオシヲ神・イワツチビコ神・イワスヒメ神・オオトヒワケ神・アメノフキヲ神・オオヤビコ神・カザモツワケノオシヲ神・オオワタツミ神・ミナト神・ハヤアキヅヒコ神・ハヤアキヅヒメ神。
 ハヤアキヅヒコ神とハヤアキヅヒメ神の子(12神)
 アワナギ・アワナミ・ツラナギ・ツラナミ・アメノミクマリ・クニノミクマリ・アメノクヒザモチ・クニノクヒザモチ・シナツヒコ・ククノチ・オオヤマツミ・カヤノヒメ(別名ノヅチ)
 オオヤマツミ神とノヅチ神の子(11神)
 アメノサヅチ・クニノサヅチ・アメノサギリ・クニノサギリ・アメノクラド・クニノクラド・オオトマトヒコ・オオトマトヒメ・トリノイワクスブネ(別名アメノトリフネ)・オオゲツヒメ・ヒノヤギハヤヲ(別名ヒノカガヒコ・ヒノカグツチ)
 カグツチを産んだためにイザナミ命が命を落とした時に生まれた神々(6神)
 カナヤマヒコ・カナヤマヒメ・ハニヤスヒコ・ハニヤスヒマ・ミツハノメ・ワクムスビ(ワクムスビの子がトヨウケビメ)
5、火神被殺
 イザナキ命は嘆き悲しみ、沢山の涙からはナキサワメ神が生まれた。イザナミ命の遺骸は出雲と伯耆の境にある比婆山に葬られた。
 イザナキ命はカグツチ神を十拳剣(一名アメノヲハバリ・イツノヲハバリ)で切り殺した。その時に生まれた神々は、イワサク・ネサク・イワツツノヲ・ミカハヤヒ・ヒハヤヒ・タケミカヅチ(別名タケフツ・トヨフツ)・クラオカミ・クラミツハ(8神)。
 殺されたカグツチ神から生まれた8神
 マサカヤマツミ・オドヤマツミ・オクヤマツミ・クラヤマツミ・シギヤマツミ・ハヤマツミ・トヤマツミ
6、黄泉の国
 イザナギ命がイザナミ命の黄泉の国の殿に入ってみると、そこにはウジ虫にたかられたイザナミの死体があった。イザナミの死体に生成した神々は、オオイカヅチ・ホノイカヅチ・クロイカヅチ・サキイカヅチ・ワカイカヅチ・ツチイカヅチ・ナリイカヅチ・フシイカヅチ(8神の雷神)。
 イザナキ命が黄泉の比良坂を逃げ帰る時ヨモツシコメに追われたが、エビカヅラ、タカムラ、桃の実によって救われた。とくに桃は効き目があり、オオカムヅミ命と命名された。
 イザナミ命自身が最後に追って来たが、イザナミは「青人草を一日に千人殺す」と呪ったのに対し、イザナキは「産屋を千五百建てる」と言い負かした挙句、黄泉の国の坂に千引き岩を引き据え、穢れた黄泉の国の者が来ないようにした。
 その坂を今は出雲国の伊賦夜坂(いふやさか)と言っている。
7、禊祓いと神々の化生
 イザナキ命は黄泉国での穢れを祓おうとして、日向の橘の小戸の阿波岐原に行き、禊祓いを行った。
 禊祓いの時に生まれた神々(26神)
 ツキタツフナド・ミチノナガチハ・トキハカシ・ワヅラヒノウシ・チマタ・アキグイノウシ・オキザカル・オキツナギサビコ・オキツカヒベラ・ヤソマガツヒ・オオマガツヒ・カムナホビ・オオナホビ・イヅノメ・ソコツワタツミ・ソコツツノヲ・ナカツワタツミ・ナカツツノヲ・ウワツワタツミ・ウワツツノヲ・天照大御神・月読命・建速須佐之男命。
8、三貴子の分治
 最後に生まれたアマテラス・ツキヨミ・スサノヲの三子を見て、イザナキは大いに喜び、アマテラスは高天原を、ツキヨミは夜の食国を、スサノヲには「海原」を統治するように命じた。
9、須佐之男命の涕泣
 スサノヲは父のイザナキに言われた通りをせずに、泣いてばかりで、「母(イザナミ)のいる根の堅州国に行くんだ」と駄々をこねていた。イザナキはとうとうスサノヲを追放した。
・オノゴロ島を「自転島」と解釈すると地球のような自転する惑星のことか。
・ヒルコとは「昼子」で昼の交接で生まれた子で、アワ島は正式な交接でなく生まれた子か。不詳。

・大八島国の島々の別名はすべてひらがなで記した。この中で「肥国」の別名は「建日向日豊久士比泥別」とあり、通説では「たけひむか・ひとよ・くしひねわけ」と棒読みをするが、それでは意味が通じない。またここに「日向」が入っていると考える向きもあるが、誤謬である。

・イザナミ命が火の神を産んで女陰が焼けて命を落としたこというストーリーは、火山の噴火により溶岩が流れ出して大地と地上の物が絶滅する様子に喩えることが可能である。
 もしそうだとするとこのイザナミ・カグツチ神話を作ったのは火山活動の日常的にみられる南九州由来の人物群ではないか、と考えてもよい。

・黄泉の国でイザナミに会うが遺体が蛆にたかれてひどい状態になっているという描写は、古墳時代の古墳内部の様子を髣髴とさせる。
 古墳でも追葬のできる時代の描写で、前期の竪穴式古墳ではなく、中期以降の横穴式石室古墳時代に作られた説話と思われる。
 黄泉の国が地下であるとすれば古墳でも南九州独特の「地下式横穴墓」が候補に挙がる。
 地下式にも「羨道」があり、石室(墓室)との境には閉塞石が置かれているが、羨道を「黄泉の比良坂」に、閉塞石を千引き岩になぞらえることが可能である。
 出雲地方での説話になっているが、イザナキが禊祓いをしたのが日向であることから考えると、オリジナルは古日向すなわち南九州にあった可能性が強い。
 また、スサノヲが海原を統治せずに「母の根の堅州国」へ行きたいと泣き喚いていたことも参考になる。母のイザナミは地下の堅い国(統治することを必要としない不変の、つまり死んだ国という意味か)に居ると云っているわけで、これも南九州の「地下式横穴墓」を髣髴とさせる。

◎ほかに肝属川河口地域の柏原に原点のある「橘姓柏原氏」についても若干の時間を割いて解説したが、大隅のこの地にいつ橘氏が下向して柏原氏を名乗ったかについては、橘諸兄(父:敏達天皇5世の美奴王 母:県犬養美千代)から数えて12代目に当たる橘公盛かその嫡子で薩摩守・公長あたりではないか―とした。およそ1100年頃のことである。


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